PROJECT

2023.06.13

月夜の晩だぜ、ポンポコポン Vol.2 「指差す先に月はある」

 今年はブルース・リー没後50年だ。もう50年も経ったのかと感慨も深い。「燃えよドラゴン」が日本で公開されたのが197312月だった。本作をさっそく見てきた姉貴が「ほんまブルース・リー最高やったわ」と興奮気味にしゃべっていたのを思い出す。俄然興味がわいた僕も友達と一緒に見に行った。圧倒的なリーのアクションにたちまち虜になってしまった。しかし、スクリーンを縦横無尽に駆けていた彼はすでに5ヶ月も前に亡くなっていたのだった。続いて「ドラゴン危機一発」「ドラゴン怒りの鉄拳」はその翌年に公開。「ドラゴンへの道」は1975年の公開だった。その間、僕は寝ても覚めてもブルース・リーに夢中になっていた。彼に関する書籍は読みあさり、アクションシーンを真似、ダブルヌンチャクをほぼ完全にマスターした。ラジオでは浜村淳が映画の解説のたびに「必殺飛燕一文字五段蹴り、胡蝶肘打ち三段返しアチャー!」と叫んでいた。熱い日々であった。

先日、久しぶりに「燃えよドラゴン」を鑑賞した。今となってはなんとはないストーリーだったが、キレッキレのアクション、圧倒的な存在感に今さらながら血沸き肉踊った。

「考えるな、感じろ!」。この映画で最も有名なブルース・リーの名セリフである。技に気が入らない弟子に向かって諭すセリフだ。物語のほぼ冒頭のシーンだったので驚いた。あれっ、物語の終盤近くで出てくるものと思っていただけに、僕の記憶のあいまいさに自分自身に呆れてしまった。しかし、そのセリフのすぐ後に続く「考えるな、感じろ!それは月を指差すようなものだ。指先を見ていたら栄光はつかめないぞ」というセリフのほうに響くものがあった。ああ奥深いセリフだなと感じた刹那、出身高校の校歌3番に出てくる歌詞「♩思索の彼方に〜さゆる月〜♩」がふいに頭によぎった。仕事で考え事をしていると、ふいに鼻歌となって出てくるくらい好きな歌詞で、「月が見えているか」といつも自分を鼓舞してきた。この映画のセリフがあって、校歌の歌詞に魅かれたのかも知れない。ブルース・リーも、指先にばかりこだわっていると「月」(栄光)は見えないぞ、と弟子に諭していたわけだ。本質、真実は、自分が思うよりも彼方にある。小賢しく考えるのではなくもっと大きな視座で感じるのだ、と。いつも月は彼方に輝いている。月夜の晩だよ、ポンポコポン。